ホテル経営者が見落としがちなレジャーホテルの節税ポイント

【定期コラム】
総合ユニコム発刊の季刊誌「レジャーホテル」に

“キャッシュフローを維持するための戦略的な税務対策”と題して、連載を開始いたしました。
ラブホテル・レジャーホテルの運営にご参考になれば、幸いです。

レジャーホテル2015夏by綜合ユニコム

【ホテル経営者が見落としがちなレジャーホテルの節税ポイント】

レジャーホテル経営において、長期的な安定を維持するために、オーナー様は、日々、試行錯誤を繰り返し、たゆまない努力を続けられていることと思います。日々のオペレーションはオーナー様の努力で維持できるかもしれませんが、やはりその運営上、税務対策は不可欠なものです。

税務対策とは、ただ毎期の法人税を圧縮するための節税対策にとどまらず、物件の購入時にはじまり、リニューアル・事業承継・相続対策にまで及びます。これらを効果的に対策していかないと、長期的な安定の維持はむずかしいといえます。 レジャーホテル経営に独自のノウハウが必要なように、税務対策も、業界独特の事業構造を熟知したうえで税務対策を行なう“専門の税理士”が求められます。

私は、約20年にわたりホテル業界の経営・税務に携わってきましたが、本連載の第1回は、レジャーホテルの税務対策のポイントについて、みていきたいと思います

◆ホテル経営者が見落としがちなレジャーホテルの節税ポイント

●「キャッシュフロー」の重要性

税務対策を行なう前に、考えておくことがあります。それは、事業計画です。とくに資金繰り、キャッシュフローを意識する必要があります。融資を受けて資金調達をし、不動産の購入資金や改装工事に多額の投資をすると、当然のことながら、借入金元本の返済と金利の負担が生じます。借入金の元本部分は経費になりませんが、経費になると勘違いされているオーナー様もまだおられるようです。経費にできるのは利息の部分のみです。そのため、その元本分は法人で利益を出さないと返済できなくなります(実際には減価償却も関係しますが、ここでは省略します)。利益が出れば当然法人税の納税も生じます。返済と納税も考慮して事業計画を立てないと、黒字倒産なんてことにもなりかねません。

オーナー様の意識は、売上げにある方が多いようです。いかに客単価や回転数を上げて、ルーム売上げを伸ばすか。そこに興味がいくのは当然ですが、長期的な安定を考えるのであれば、売上げよりも利益、利益よりもキャッシュフローを意識すべきです。

●レジャーホテル売買の節税ポイント

レジャーホテルの購入には2つの方法があります。一つは不動産の売買。もう一つはM&A(株の売買)です。不動産売買の場合は、土地よりも建物が多ければその分減価償却が計上できるため、その後のキャッシュフローが楽になります。また、消費税も土地には課税されないため、建物が多い方が、税額を抑えることができます。
M&Aは株の売買です。M&Aのメリットデメリットについてはここでは割愛しますが、ポイントとして、まず売買総額のうち、株の金額は押さえるべきです。これは、土地と同様に貸借対照表に「有価証券」として計上され、償却を一切生まないからです。株の代金以外については、金融機関や売主への借入金の返済に充てるほか、退職金に充てることになります。退職金は全額経費に充てることができるため、退職金を多く計上できるようにしておくと良いでしょう。ただし、過大な退職金は経費にできないケースもあるため、注意が必要です。

この退職金ですが、実は出口戦略(売却時)においてもきわめて優遇された課税の仕組みであり、資産づくりとしても、とても重要です。 一体どのように優遇されているかというと、所得税法上、退職所得として課税され、退職金控除という手厚い控除があり、さらにその控除後の半分のみについて課税されます。この、高額な社長の退職金は事前に準備しておく必要があります。売却時のために普通預金にストックしておくわけにはいかないので、通常は、生命保険を活用します。生命保険は払った金額の全額、半額などを経費にできます。保険の種類にもよりますが、生命保険を活用することは節税対策の王道といえます。退職金の原資に利用するほか、相続対策にも利用できます。詳細は、次回以降で説明させていただきます。

●リニューアル時の節税ポイント

レジャーホテルにとって、リニューアルは不可欠です。
定期的に行なうリフレッシュレベルのものから、5年程度の間隔の中規模リニューアル、さらに大規模なものとしては、15年程度で全面改装を行なうホテルも多いと思います。

限られた予算のなかで集客アップを実現するための空間のブラッシュアップが最大のポイントですが、同時に、節税対策を意識したリニューアルということも重要です。

たとえば弱電設備などの備品関係の固定資産で30万円未満のものは、その期の中で全額損金(経費)にできます。1事業年度で総額300万円までという条件や、時限立法といって、適用期限があるため、注意は必要です。また、償却資産税が生じるため、顧問税理士とよく相談してから判断した方が良いでしょう。

そのほか、10万円未満の固定資産は、上記の条件などもなく、全額損金にできたり、20万円未満のものについては、3年間で損金にできたりという制度もあります。これらの法律は、ご存知のオーナー様も多いと思いますが、次のものは意外と見落とされている方も多いような気がします。

たとえば、従来型の蛍光灯からLEDへ取り換えをする会社がありますが、これは、取替費用として、全額損金とすることができます。節電効果と節税効果を兼ね備えているため、私は自分のクライアントにもお勧めしております。また、レジャーホテルで結構多いのが、不要な固定資産の取り扱いです。固定資産が使用できなくなり、廃棄処分した時には、その資産の価額を除却損として損金に計上できます。さらに、有姿除却といって、その使用を廃止し、今後は事業に使用する可能性がないと認められる資産などは、一定額を損金に計上できます。リニューアル時や決算の時などに、会社の固定資産台帳を是非、調査・検討してみてください。意外とあるものです。

●事業承継・相続対策等

会社の資金繰りが厳しいとき、社長は受け取った給与を会社に貸し付けることがあると思います。また、資産を購入するときなど、銀行からの融資だけでは不足する場合は、社長個人のお金を会社に貸すことがあります。会社に利益が出ていて社長へ返済しているときは良いのですが、塩漬けになっていると、貸借対照表にいつまでも借入金残高が残ってしまいます。会社側からみると借入金ですが、社長からみると貸付金ですから、相続財産となります。1億円の貸付金は1億円の相続財産になってしまいます。実際は返済不能であるとすると、後継者が相続税を納税することができなくなるので、早めの対策が必要です。
貸付金を減少させるには、主に下記の4つがあげられます。

① 社長が貸付債権を放棄する
② 役員報酬を減額し貸付金を返済する
③ 貸付金を資本金に振り替える
④ 貸付金を相続人等へ前もって連年贈与する

ただし、これらもケースバイケースで、問題点もあるので、実際に行なう場合は、良く検討する必要があります。
相続税を意識すると、「自社株の節税」も重要になってきます。ここでの自社株とは、同族会社のオーナーやその親族が所有する株式等のことをいいます。ご自分の会社の株式の評価額をざっとつかんでおくと良いでしょう。毎年利益が出ていれば、結構高額な評価額になっていて驚かれるかもしれません。

この自社株も相続財産になりますから、早めの対策が必要です。タイミング良く贈与を検討するほうが良いと思います。現在、会社の財務状態が債務超過であれば、株価はゼロなので、無税で贈与することができます。債務超過でない限り、無税で贈与はできませんので、下記の2つの方法で後継者に引き継ぐことになります。

①「暦年贈与」を使う
これは、基礎控除額の110万円を使って、毎年コツコツ自社株を贈与する方法です。

②「相続時精算課税制度」を利用した贈与
この制度は、贈与したときの贈与税を軽減しておき、将来発生する相続時に、それまでに贈与した財産を含めて相続税を計算し、贈与税を精算するものです。条件を満たすことで2,500万円までの贈与には贈与税がかかりません。これを超える贈与があれば、その部分に対して20%の贈与税がかかるものです。つまり通常の贈与よりはるかに贈与税を減らすことができるのです。

以上、レジャーホテルの長期的な安定に必要であり、知っておくべき節税のポイントを総括的に説明させていただきました。今回は総論であるため、詳細を割愛する部分が多かったと思いますが、今後はポイントごとに解説をさせていただければと思います。

今後も発刊ごとに、追加してご紹介いたします。

佐々木税務会計事務所

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