レジャーホテルにおける効果的な事業承継の考え方

【定期コラム】
総合ユニコム発刊の季刊誌「レジャーホテル」に
“キャッシュフローを維持するための戦略的な税務対策”と題して連載しているコラムの第三回目です。
ラブホテル・レジャーホテルの運営にご参考になれば、幸いです。

季刊 レジャーホテル no.111

【早期の対策が求められるレジャーホテルの事業承継】

今回は、オーナー社長にとって、乗り越えなければならない、大きな課題の一つといえる、事業承継について考えてみたいと思います。

●承継の時期について

 商品のライフサイクルといわれるものがあります。
 「導入」→「成長」→「成熟」→「衰退」と4つの成長プロセスがあり、企業組織においても同様の考え方があります。事業承継を考えるうえで、高齢になってから検討するのでは遅い。成熟期に入る前の早い段階から検討するべきだといわれています。

●事業承継を取り巻く環境

 事業承継を取り巻く環境についてみてみましょう。中小企業の数は、日本企業全体の99.7%を占め、従業員数でも被雇用者の70%を占めるといわれています。一方で、後継者が見つからないため、自分の代で事業を終えることを考える経営者が増加しているようです。実際、経営者の平均年齢は年々高くなり、60歳以上の人が半数以上。平均年齢からみても、今後10年で引退を迎える経営者は5割を超えます。最近は、子どもに引き継ぐケースが半数以下に減少し、60歳代前半の後継者不在率は60%以上に及ぶようです。

●レジャーホテル業界の事業承継

 レジャーホテル業界においても、二代目・三代目の若い経営者が増えていますが、その一方で、後継者になり得る子どもがいても、事業を引き継がないケースも多いようです。
 経営者が高齢化すると、体力的に管理することが困難となり、最近の業界動向や利用ニーズをとらえることもむずかしくなります。また、いまさら融資を受けてリニューアルに取り組み売上げアップを目指すという意欲もなくなるでしょう。結果として、最終的にホテルを安値で売却するというケースも多いようです。
 また、後継者が決まっているケースでも、レジャーホテルは高利益体質であり、株価も高騰しているので、早めの相続対策が必要になってきます。

【事業の成長戦略のための効果的な相続対策の考え方】

●事業承継で引き継ぐもの

 事業承継では、

 ①社長の役割と経営権(ヒトの承継)
 ②会社がもつ資産(自社株式・会社の土地・建物・設備)
 ③見えない経営資源(経営理念・会社の信用力・ブランド・ノウハウ・技術・人脈)

の3つの財産を、次の後継者として誰に、どのように引き継ぐかが、大事なポイントになります。
 今回はそのなかでも資産の承継である相続対策にクローズアップします。

●事業承継に係る相続税対策

 事業承継に係る相続対策でまずすべきことは、経営者個人の資産の洗い出しです。洗い出しをする場合は、①事業用(会社の株式や個人から貸し付けている不動産や貸付金)、②個人用(居住用の不動産や車・会員権・預貯金・有価証券や保
険金など)に分けて整理し、最終的にそれらを合わせて相続財産の評価額を算出することになります。財産や債務の状況に応じて、必要な相続対策を検討していくことになります。まずは、現状認識というところです。たとえば、後継者が子どもなど相続人の場合だと、財産が自社株式などに偏っている場合、後継者に自社株式を引き継がせるため、後継者以外の相続人が遺産分割で不公平になりかねないので、最低限の遺留分は確保し、一定の財産を残せるように、事業以外の個人資産を確保して、遺言書などで、その分け方を指定しておくことが重要になります。
 また、事業用や居住用の土地は誰が相続するかで、相続税の評価額を減額もできたりします。このように、相続人・後継者・財産状況で対策は変わります。

●レジャーホテルの自社株式の引継ぎ

 レジャーホテル業界を考えると、前述のとおり、高利益体質で、株価が高騰しやすいため、「自社株式」の引継ぎが重要になります。
 この引継ぎの問題点と対応策としては、下記の三つになります。

 ①相続でもし株式が分散すると、安定した経営が難しくなるので、後継者への株式の集中化が必要になる。相続の遺産分割を失敗して株式が分散した結果、経営者が全く知らない株主が現われるなんていうケースも少なくないようです。そうすると、ほとんどのケースで争うことになってきます。たとえば、最初は長男と次男だけだった株主が、次男が亡くなって妻が相続し、その後、その子供もしくは場合によっては妻の兄弟が相続しているといったケースもあります。

 ②自社株式の評価額が高いと相続税・贈与税の負担が重くなるため、節税対策・納税対策が必要になります。

 ③後継者以外の相続人に遺産分割や遺留分の問題が生じるため、相続対策が必要になります。

●自社株式の引継ぎ方法

 これらの対応策を踏まえて、どのように自社株式を承継させるかというと、こちらも下記の3点になります。それぞれのメリットデメリットを記載します。

 ①相続による承継
 承継するタイミングを選べない・相続税や遺留分の問題というデメリットがありますが、後継者の納税猶予の制度を使えるメリットがあります。

 ②生前贈与
 贈与税の負担や遺留分の問題がデメリットですが、承継のタイミングが選べ、納税猶予制度も使えます。

 ③売買
 売り手に譲渡所得税の負担があるのと、買い手には購入資金が必要になるデメリットがあるが、承継のタイミングが選べ、遺留分の問題が生じないというメリットがあります。

●生前贈与について

 上記の承継のなかでも、使い勝手が良いのは、生前贈与ではないでしょうか。暦年贈与というやり方で、毎年贈与税の基礎控除額(非課税枠)である年間110万円の範囲で複数年をかけて贈与していくやり方は現金だけでなく、自己株式に利用する方も増えております。
 ただし、株価が高騰している場合は、110万円ずつ贈与しても焼け石に水である場合もあるため、非課税枠を超えて毎年数百万円ずつの贈与をして贈与税を払ったほうが、相続税も含めて考えると有利だったりするケースもあります。
 また、非課税枠等にこだわらず、まとめて自社株式を贈与する場合は、自社株式の評価額が低いタイミングで行なうのが一般的です。たとえば、会社が債務超過であれば株価をゼロ円として贈与できます。債務超過ではなかったとしても、何か大きく損失を出した後や、新たな物件を購入してうまく損出しができた直後などは、株価の引下げができていると思います。また、生前退職金を支払うことで、評価を下げることもできます。
 贈与の対策としては、もう一つ「相続時精算課税制度」があります。60歳以上の父母・祖父母から20歳以上の子・孫への贈与が対象で、2,500万円まで非課税で贈与が可能です。その額を超えた贈与部分には、一律20%の税率で贈与税が課されます。贈与する財産は、金銭だけでなく、不動産でも株式でも構いませんし、何回かに分けての贈与も可能です。贈与した人が亡くなって相続が起こった場合、この制度で贈与した財産は、相続税の課税価格に含めて相続税を計算します。その際、すでに支払った贈与税がある場合は、相続税額から差し引かれ、引ききれなかった分は還付されます。結局贈与したものが、いずれ相続財産に含まれるので、相続税の負担を抑えることにはつながりません。ただし、相続の際、贈与された財産は、贈与された時の価額で評価されます。したがって、将来の値上がりが予想される株式や不動産を贈与し、それが相続時に値上がりしていれば、生前に贈与しなかった場合と比べて、相続税の負担が抑えられます。たとえば、事業承継の場合、現経営者がこの制度を使って、後継者に自己株式を贈与すれば、将来株価が上がっても、その増加分には相続税がかからないので、贈与税・相続税の両方で節税が可能になります。逆に、贈与した財産が値下がりしていると、贈与しなかった場合に比べ、相続税の負担が重くなるケースもあります。

●役員貸付金は相続財産になる

 会社の資金繰りが厳しい時、社長が個人的にお金を会社に貸し付けることがあります。
 また、資産購入時、銀行融資だけでは資金不足の場合は貸付をすることがあります。この貸付金が塩漬け状態になっているケースも多いようです。貸借対照表にいつまでも借入金残が残っているケースです。この場合、社長に万が一の事が起こってしまうと、相続財産にこの借入金残が含まれます。相続人は、債権を引き継ぐことになるからです。たとえば、1億円の貸付金は、1億円の現金と同額の相続財産になるわけです。現金であれば納税資金に充てられますが、塩漬けの貸付金ですと、手元にない財産から相続税を払うことになってしまいます。事業承継・相続対策を考えるうえでは、この貸付金を早期に減少させる必要があります。
 主な方法としては、下記の四つです。

 ①債権を放棄(会社は債務免除益計上)
 ②役員報酬を減額し貸付金を返済する
 ③貸付金を資本金に振り替える
 ④貸付金を相続人等へ前もって贈与する

 このような方法がありますが、会社の状況によってとり得る方法が異なりますので、専門家にご相談ください。
 以上、レジャーホテル業界に係る事業承継・相続対策について記載いたしましたが、ここに書かれた方法のみならず、他にもたくさんの対策はありますし、オーナーが10人いれば10通りの対策がありますので、早めに、そして、慎重に検討して対策をする必要があると思います。

今後も発刊ごとに、追加してご紹介いたします。

佐々木税務会計事務所

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